『老子』:「禅」の源流、全文 書き下し文と現代語訳(超訳)【第六十七章】『老子の三宝』我れに三宝(さんぼう)あり、持(じ)してこれを保つ。一に曰(いわ)く慈(じ)、二に曰く倹(けん)、三に曰く敢(あえ)て天下の先(せん)とならず、と。

2025年2月26日車中泊と老子,『老子』全文 書き下し文と現代語訳(超訳)

第六十七章

※書き下し文、現代語訳は、蜂屋 邦夫先生著『老子』 (岩波文庫)を参考にしました。

書き下し文

天下(てんか)(みな)()う、)れは(だい)にして不肖(ふしょう)()たり、と。

(不肖(ふしょう)なり、(ゆえ)()(だい)なり。

()しょうならば、(ひさ)しいかな()さいなるや。

)れに三宝(さんぼうあり、()して(これ)(たも)つ。

(いち)(いわ)

()(いわ)けん

(さん)(いわ)(あえ)天下(てんか)せん()らず、と。

()なり、(ゆえ)()ゆうなり。

けんなり、(ゆえ)()(ひろ)し。

(あえ)天下(てんか)せん()らず、(ゆえ)()(ちょう)()る。

(いま)()ててまさゆうならんとし、

けんててまさ(ひろ)からんとし、

()ててまさせんならんとせば、()せん。

は、もっ(たたか)わばすなわ()ち、もっ(まも)らばすなわ(かた)し。

(てん)(まさ)(これ)(すく)わんとし、(もっ)(これ)(まもる。

現代語訳(超訳)

世の中の人々は、みな、わたしは大人物のようだが愚か者のように見える、と言います。

そもそも愚かであるからこそ、大きくありうるのです。

もし賢ければ、とっくに細々こまごましたことにかまける小賢こざかしい者になっていたでしょう。

わたしには三つの宝があり、それらをしっかりと保持しています。

第一はいつくしみの心(思いやり、優しさ、相手の幸せを願う)、

第二は倹約(慎ましさ、欲に溺れない、足るを知る)、

第三は世の中の人々の先頭には立たない(謙虚さ、人に先を譲る、出しゃばらない、俺が俺がと言わない)、ということです。

慈しみの心を持っているから勇敢でありうるし、

倹約であるから逆に広く行えるし、

世の中の人々の先頭には立たないから万人の長になりうるのです。

もし今、慈悲を捨てて勇敢であろうとし、

倹約を捨てて広くしようとし、

人の後になることを捨てて先頭に立とうとすれば、

その結果、死に至ります。

慈しみの心によって戦えば勝ち、慈しみの心によって守れば堅固です。

天が人を救おうとすれば、慈しみの心がある人を守るのです。

※次章:『老子』:「禅」の源流、全文 書き下し文と現代語訳(超訳)【第六十八章】よく士(し)たる者は武(ぶ)ならず。よく戦う者は怒(いか)らず。よく敵に勝つ者は与(とも)にせず。よく人を用いる者はこれが下(しも)となる。

『老子』全文 書き下し文と現代語訳(超訳)記事一覧はこちら